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弟でもできた気分だ。そう言うと、怒るだろうが……
ジルベールの髪は見たとおりでとても細い。繊細な顔立ちに、とてもよく合っている。
ドライヤーの風に吹かれる長い襟足は秋風に揺れる麦畑のよう……
なんとも儚さがあった。
はらはらと揺れる髪を柔らかいブラシで梳いてやる。傷つけてはいけないと思ったからだ。
「髪、跳ねたりしないの?」
「まァ、跳ねるよね。でも何とかしてもらってるから」
なるほど、彼には身の回りを構う人間がいるらしい。さすがは御坊っちゃんだと、ミラベラは苦笑した。
「なんだよ」
「御坊っちゃんね」
すぐにジルベールは反応する。何やら不満顔である。彼に対し、ミラベラはやはり笑って答えた。
「何か飲む?」
「……水」
少年がのぼせる前にと思っていたが、どうやら遅かったようだ。コップになみなみ注いだ水を渡す。
薄く形のいい口唇は触れてしまうと、とても柔らかかった。その唇がコップの縁を咥えて喉を鳴らす。
御坊っちゃんが「……熱かった………」と呟いて口を拭う。
しかしジルベールは、まだ熱いことは黙っていた。
「帰る」
ミラベラへの礼もそこそこに、町を飛び出した。
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