La Vie en rose - 薔薇色の人生 -

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 僕の父は「素直じゃない、難ありな性格が好き」なのだと言った。では自分はどうなのだろう。  ミラベラのどこを好きになった?  顔?  ――もちろん綺麗だ。  身体……?  ____とんでもない魅力がある。  ジルベールは彼女に抗えない。  髪から肩を経て二の腕を掴む。細すぎず、適度な弾力もあり肉感的だ。  二人は、またキスしていた。  ミラベラは自室から避妊具(コンドーム)がひとつ抜き取られていることに気がついていた。  相手は年頃の少年だ、「何に使ったの?」などと野暮なことを聞く気はない。 「あなたも好きね。ジル」 「ヤなの?」 「嫌じゃないわ」  いつからか、ちょっとやそっとのことでは息も上がらなくなった。これも娼婦の(さが)なのか……ほとんど重ねたまま囁く。  どうして口を離すの……? とでも言いたげに、ジルベールは二の腕から引き寄せる。力は強い。  正座をするミラベラが軽く腰を浮かすと少年の膝がスカートへ割って入る。不覚にも体は震えた。 「僕だって、いろいろ考えてる。……何も知らないなりに………」  御坊っちゃんは、あまり意地悪な真似はしない。極めて誠実で愚直で、紳士(スマート)だ。 「あなたはプロだ」  ミラベラの心臓は、いやな跳ねかたをした。この少年の表情のせいだろうか? 自分の生業(なりわい)を恨めしく思うだなんて……  ゆっくりと後ろへ倒されることに抵抗はしなかった。目が合うと、小さな音をたてて唇を吸われる。  いつになく熱っぽい視線が全身にそそがれていた。  瞳に口唇、鎖骨から胸元まで。そして、腰から下へ……  彼の頭はスカートの中にある。 「もう一回言う。邪魔だ」  ジルベールが手の甲で口許を拭う。男でも少年でもない、雄の眼をしていた。  ミラベラは、まるで力が入らない。  つい掻き抱いてしまった黄金の髪を今度こそ優しく撫でつけた。
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