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「顔が赤いよ」
「私だって女よ」
初めて会った日のように頭を抱かれる。
ミラベラの白魚のような手は何度もジルベールの髪を梳きつづけた。
「いい……? こんなときはすぐにキスなんてしないこと。自分の欲で突っ走っちゃダメよ?」
「どうしても?」
「あなた、自分の体液でも舐めたいの……? 嫌でしょう?」
露骨な表現をした。ジルベールの表情が歪む。……ちょっと、あからさますぎたかもしれない。
「ほっぺもダメなの?」
「どうしても? ……一度だけなら」
少年と同じ聞き方をした。彼は頑なだ。おそらく折れやしないだろうと想像は容易についた。だから仕方なくつけ足したが、やはり気持ち悪い。ねっとりとしている。
ジルベールにも実感はあったらしく、少々雑に袖口で拭われた。
「何してるの!? ティッシュにしなさいよ……っ!」
「だって我儘聞いてもらったし」
御坊っちゃんは何でもない事のように言う。確かに自分で洗濯などしないであろう彼には「何でもない事」なのだろうが……
「次からはやめておくことね。ジル、今日はあなたが下になって」
彼女は嘆息し、ジルベールを跨ぐ。疾うに使い物にならない下着は床だかどこかに落ちていることだろう。
二人にまつわるすべてはスカートの中にあった。
男の子がドレスの上から尻を掴む。
あなた、私なんかで捨てておいてよかったの? 既に一回奪っておいて、とても聞ける勇気はなかったが……ジルベールも、同じだ。
ねぇ、これって何なのかな?
少なくとも、メイク・ラヴなんかじゃない。
だって彼女は……仕事だから……
所詮はジルベールの華奢な腰だ。何においてもミラベラは満たされないのだろう。そう思うと途端に空虚な気持ちになった。
「兄弟、増えるんだって」
「親のことを考えるのは止しなさい。ろくなことにならないから」
「そうだな。気色悪い」
身につけている衣服をひん剥いて、すべて暴きたててやりたくなった。
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