あの日の珈琲はーー

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床一面に描かれた図面を見つめ、息を吐く。 これは魔方陣と呼ばれるものだ。 我が国には昔、魔法を使える人々がいたと謂われている。 何故かというと、魔法を使える人々ーー当時は魔法使いと呼んでいたらしいーーは忽然と姿を消したと謂われているからだ。 正確には、魔法使いがいた痕跡はあるものの、彼等の扱っていた魔法と呼ばれるモノが一体どのようなモノだったのかを把握する手段がないために、姿を消したと謂われているのだ。 つまり、魔法使いの魔法の内容を私たちは知らないのだ。 魔法使いは神出鬼没だったらしい。 居所が誰にでも掴めてしまえば、その力を利用されることがわかっていたのか、とにかく魔法使いは名前も容姿も不明だったと謂われている。 では、何故私の目の前に魔方陣があるのか? それは、我が一族がその神出鬼没で正体不明だと謂われている、魔法使いの一族だからである。 「よし。そろそろ時間ね。ちゃんと召喚しないとね……」 魔方陣の真ん中に立ち、魔力を注ぐ。 召喚の魔方陣は膨大な魔力を必要とするため、私が選ばれたのだ。 魔力を注ぎ終わると、私は魔方陣から出る。 その瞬間眩しい光が出現し、魔方陣に向かい、両手の平を向ける。 「我に流れる魔法使いの血よ。我は召喚の陣の完成をここに告げるーー喚べ。」 詞(コトバ)を受け、先程よりも一層光輝く魔方陣、やがて光が収まるとそこには男女二組の姿があった。
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