あの日の珈琲はーー

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黒いローブを目深く被った二人はローブのフードを外し、見渡すように部屋を眺める。 「ここか?」 男の問い。 「左様で御座います。我が家の屋敷の地下室です。」 私の答えに満足したのか、何度も頷き、部屋を歩き回る男を呆れたように女はため息を吐く。 「まったく……仕方のない方ね。興味が湧くとすぐ熱中して周りが見えなくなるのよ。ごめんなさいね。」 「いいえ、如何様にして下さって構いません。お二人を喚んだのは私ですから。」 「あらあら、寛大なことね……でも、嘘でも迷惑だと言っておいた方がいいと思うわよ?この人、こうなると長いのよ。」 「失礼だな。まだ要件が終わっていないのに勝手に見て回ることはないぞ。」 「まぁ、珍しいですこと。しかし、私が先に申し上げたから思い直したのではなくて?そう、まるで悪戯しようとしているのが寸前でバレた子供のように……」 図星なのか、眉間に皺を寄せる男。 クスクスと楽しげに笑う女。 「王妃様、お心遣いありがとうございます。ですが、私は大丈夫です。どうぞいくらでも検分なさって下さいませ、陛下。」 臣下の礼を行い、二人を見遣る。 私が先程魔方陣により召喚したこの男女一組は、国王と王妃なのだ。
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