あの日の珈琲はーー

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現在、この地下室にいるのは、我が国の国王夫婦、宰相閣下、そして魔法使いを魔法を管理する、魔法省長官である魔法長の4人と私の、5人である。 「長官、こちらを。両親の罪です。」 なにもない空間だが、空気中に魔方陣が浮かび上がり、10㎝はあるかと思われる冊子を手渡す。 「……まったく、貴女がやることはないと言ったでしょう?私がやりましたのに。」 「長官のお気持ちは嬉しいのですが、私の両親が行ったことです。娘の私がやるべきだと判断致しました。」 「貴女の生真面目な性格は相変わらずですね。陛下、どうぞ。」 表紙に手を当てると魔方陣が浮かび、中身を確認した後、国王に周り渡す。 「うむ、感謝する。それで、そなたは今後どうするつもりだ。」 「私の存在を消します。私が生きているともしかしたら火種になるかもしれません。自害したことにし、魔法省の職員になる予定です。」 「……そんなことはない、と否定出来ないのが残念だな。」 「はい、どうやら魔法使いがこの件に関わっているようなので、そこも調べる予定です。」 「わかった。よろしく頼む。」 「はい。」 親しい侍女の後ろ姿が浮かぶ。 彼女は私が魔法使いであることを知らず、私が私の存在を消すことも知らない。
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