「今の俺は……」

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「今の俺は……」

目を覚まし、 意識が鮮明になった瞬間、 瀧島一貴(たきしまかずき)は自分が変化している事に気付いた。 あくまで心境だが、 自信に満ち溢れた気持ちになっている。 (なんだ? このスッキリ晴れ晴れとした感じ) 就寝前の出来事を思い返す。 なにか良い気分になる事があっただろうか? 現状のもどかしさに、 憂鬱な気分でベッドに入ったはずだが、 目が覚めると180度違う感覚になっていた。 (いい夢でも見たかな?) 喉の渇きを覚え、 一貴は自室から、 同じ階にあるリビング・ダイニングへ向かった。 サーバーから水を注ぎ、 コップ半分ほど飲んで一息ついた。 中庭に面したリビング・ダイニング、 その窓際に立ち、 雲一つない夜空を見上げる。 そこに浮かぶ真っ白で、 欠けるところのない月を眺めながら一貴は思いを巡らせた。 「あっ……」 一貴は軽く戦慄した。 彼の中で一つの結論が導かれていた。 月明りの差すリビングで、 壁掛けの多機能時計に表示された月の満ち欠け予測を確認する。 (やっぱり。 今日は満月だ) 一貴はひと月程前の事を思い出していた。 夜中に目が覚め、 何となくいい気分になって、 同じようにここで空を眺めた日があった。 その日も月が丸く輝いていたはずだ 。
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