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 帰宅したら母がエキサイトしてた。 「士幌山部屋へ行ったのおおっ!?」 「ママってスモーファンだったっけ?」  「スモーなんかどうでもいーけど士幌山は好きっ。昔の四股名は『輝雄』。角界一のハンサムだったのよ? あー、会いたかったー」  ぺ・ヨンジュンにも嵐にもハマらなかった、が自慢の母がキラキラしてる。  言われてみればハンサム度ハンパなかった。  『輝雄』かぁ…  遠い遠い士幌山部屋へ、来る日も来る日も通い続ける。  特にスポーツ好きでもない、ましてスモーなんて、のアタシには、母に土産話が出来るコトいがい、何のメリットもない。  土の匂い、汗の匂い。  男たちのぶつかり合う音。  神棚。  鉄砲柱。  土俵。  お神酒。  可愛がり。  でも今のスモーはそれだけじゃない。  人型ローダーに搭乗して戦う、マシンバトル部門と、肉体改造もクスリもやり放題の、肉体強化部門。  二つの部門が増えた結果、今やスモーの代名詞たる本格は、完璧絶滅危惧種だ。  本格の名門とうたわれる、この士幌山部屋でさえ、奥にはマシン相撲土俵があり、人型ローダーが七体ある。  アタシの脳裏に母との、昨夜の会話が甦る。
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