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「これを……あの鐘崎君が?」
「ああ、うん。俺はヤツの家で先にご馳走になって来たんだけど、すげえ旨かったぜ」
「お前……今まで彼の家に行ってたのか?」
「そうだけど。今もここまで車で送ってもらってさ。家にも上がってもらおうと思ったんだけど、今日は帰るってから」
「……そうか。で、晩飯までご馳走になって来たわけか?」
「ん、そう。けどまあ、食ったの夕方だったし、こんなに量もあるし、俺ももっかい食わしてもらおっと!」
正月のおせち料理さながらの塗りの箱を広げながら、上機嫌で紫月は箸を付けた。
「うっめ! まだあったけえし! 親父も食えよ」
「あ……ああ、じゃあ遠慮なくご馳走になるとするか……」
紫月の父親は時折、手元の晩酌の酒を注ぎながら、点心のひとつひとつを大事そうに口に運んだ。
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