秘密

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(ストライクゾーンがどんなタイプか――なんて、こんな話向きの時に何でヤツの顔が思い浮かばなきゃならねえんだ……!)  紫月は滅法気分の悪いといった調子で、ガシガシと髪を掻き上げると、隣の席でふてくされ気味の男に大胆なほど顔を近付け、耳打ちをしてみせた。 「やっぱ出よっか、ココ」 「は……?」  急にどういう風の吹き回しだというように男がこちらを凝視する。思いっきり口に頬張ったつまみのポテトチップスをモグモグとしながら、ポカンと硬直状態だ。 「だから……ヤりに行こうかって言ってんだ。近くのラブホ、どこでもいいよ」  すっくと立ち上がると、早々にカウンターを後にする――そんな紫月の後ろ姿を慌てた視線で追い掛けながら、男はアタフタと会計を済ませて店を出た。
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