秘密

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秘密

 のっけからの一騒動で始まった新学期ではあったが、一夜明けてみれば、四天学園の紫月らも、そして桃稜の氷川白夜や白帝の粟津帝斗らにも、それぞれにとって通常の学園生活が幕を開けていた。  伝統勝負を難なくかわして一息というところの紫月には新たな受難、何となく目障りな転入生の登場で内心穏やかではない。  いつまでも新学期気分というわけにはいかず、授業が始まるだけでも面倒臭いというのに、隣の席にその男がいるというだけで、ワケもなく勘に障る気がしてならない。ソワソワと落ち着かず、隙を見てはチラチラと隣の様子を気に掛ける自分自身にも、胸くその悪い思いがしてならなかった。  ふと見れば、真っ直ぐに黒板を見つめる彼の横顔がひどく印象的で、苦虫を潰したような気分にさせられる。  高くて形のいい鼻梁に、彫りの深くて涼しげな目元、まるで濡れた羽のように艶のある黒髪、そのすべてが何とも気障ったらしく思えてならない。どこから見ても隙のなく、完璧でケチの付けようがない程に整い過ぎた出で立ち容姿はさることながら、身にまとった雰囲気がどことなくオリエンタルな魅力をも持ち合わせているようで、とにかく腹立たしいわけなのだ。
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