夫婦刀に秘められた謎

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夫婦刀に秘められた謎

 紫月が屋上で毒舌をかましてから後も、特には変わったことのないままに二日が過ぎた。  鐘崎という男もすっかり紫月らの仲間内に溶け込み、それをきっかけにクラスの連中らともぼちぼちと馴染むようになっていった。  皆、ほぼ思うところは等しいというわけか、今まで遠目に鐘崎を窺っていた者たちも、一度きっかけができてしまえばこの男を好意的に取り巻く様が一目瞭然だ。傍目から見てもやはりこの鐘崎にはある種の風貌があるということなのだろう。特に京とは折り合いが合うのか、この短期間に互いを名前で呼び捨てるまでになっていた。まあどちらかといったら京の方が積極的な感があったが、とにかく彼の人懐こい性質のせいもあってか、鐘崎当人もそれにつられるようにして違和感のなく馴染んでいるその様子に、紫月だけは未だ気の重いながらも静観しているといったふうだった。  元々口数の少なく硬派なイメージの紫月のこと、仲間内で彼だけが鐘崎と大して親しげにしていなくても、特には気にとめる者もいなかったとういうのが幸いか。とにかく紫月はノリのいい剛と京の後ろに付いていくというような感じで、他力本願的な日々を過ごしていたのだった。
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