1章 僕だけ置いてけぼりな件について

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僕は今、大きく手を振りながら、足を全力で動かしている。何を言いたいのかと言うとだな。要するに、遅刻しそうな訳だ。全力で走らないと間に合いそうにない訳だ。走りざる負えない状況だ。 駅前付近を見渡すと、それらしき姿はない。腕時計を見てみると、時間はピッタシだ。委員長も遅刻か。学校は絶対に遅刻しない癖に、僕とのデートは遅刻するとは、皮肉なもんだなぁ。 「聞こえてるわよ?」 「ヒィ!」 声に出した覚えはないが、出ていたらしい。いや、出ていたのか? 「やぁ。委員長おはよう。聞こえてるって何のことかな?」 少し顔を引きつらせながら聞いてみる。 「私が遅刻したって話よ」 「そんな事言ったかな?」 「言ってたわよ」 鋭く目を尖らせて、僕を睨みつける。 「気のせいだよ!早く行かないと電車来ちゃうよ?」 「そうね。この話の続きは、後にしましょ」 「もうこの話は、いいんじゃないかなー」 「ダメよ!詳しく聞かないと私の気がすまないわ」 こいつの気は一体どうなっているんだ? グツグツと煮えたぎる怒りとは裏腹に、静かに流れる滝のような、静かな怒りだろう。 案の定電車はもう、来ていた。あまり、マナーとして良くはないが、仕方ない。委員長の手を握って僕は、電車の中へと駆け込んだ。 「駆け込み乗車は如何なものかと思うわ」 「仕方ないよ。これ乗れなかったら、次来るの、40分後だよ?マナーを守ったら、時間を守れなくなるんだよ」 もっともらしいことを言ってはいるが、電車の扉は、閉まりかけていたのだが、駆け込み乗車をした為、一度開いてまた閉じた。運転手さんにも、悪いことをした。 「過ぎたことを、考えても仕方ないよ!」 「ほんと今起こった事だけどね」 「前しか見ない主義なので」 腰に手を添え、おもっきり胸を張る。 周りの視線はかなり刺さってはいるが、そんなのは、ダメージのうちに入らない。ほんとのダメージは、人からの視線でもましてや、委員長から見る目が変わられる事ではない。この車両に、いや、この電車に乗っているには、全てうちの生徒じゃないか。「ところでさ、なんでこんなにうちの生徒が居るのかなー?」 「そんなの決まってるじゃない。修学旅行だからでしょ」 辺りはやけに賑やかだが、僕の中では、静寂が生まれ静かな時が電車のガタンゴトンという、音と共に過ぎ去って行く。
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