鬼ごっこ

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               『いらっしゃいませ』  はぁ…、はぁ……。  助けて…。誰か……!! 「何処に逃げても無駄だぜ~?」  緑が深い森の中。夏の強い光も、この深い緑に遮られ届かない。そんなところを一人の少女が白いセーラー服を肌に張り付かせ懸命に走っている。短い髪も汗で少女の綺麗な白い顔に張り付いている。  そんな少女とは対象的に、涼しそうな顔をした背の高い細身の男が少女の後を追っている。男の手には鈍く光る黒い拳銃。男の表情は獲物をいたぶることを楽しんでいるかのようにニヤついていた。 「きゃっ!!」  少女が張り出した木の根につまずき転んだ。その瞬間を逃さず、男は少女へと銃口を向けた。 「ばいばい」  どこか楽しげな明るい声でそう言うと、男は軽々と引き金を引いた。 ドゥン…!!  少女の最期の声は、呆気なく銃声に掻き消された。
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