真実と、幸福を…

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 今日も授業はかったるい…。  そう思いながら京はくるくるとシャーペンを回していた。黒板には、白いチョークの粉と自分の唾を撒き散らしながら熱弁を奮う現国の先生。  はぁ…と溜息をつき、京は窓の外を眺めていた。  真っ青な青い空に、純白の入道雲。グラウンドの土は乾いて薄茶で、太陽の光をめいっぱい受けている緑が目に眩しい。きっと窓を開けたらむわっとした熱気と共に煩い程の蝉の声が降りかかるのだろう。  だけどここは私立特有の、人工的な過ごしやすい気温、防音の壁、厚いガラス。  京は最近そんな日常がおかしいと思い始めていた。夏は暑いのが当たり前なのに。暑さがなければ、この外にある美しい光景は見られない。  授業が終わり快適な空間から逃げるように京は外へと向かった。  じわり…と汗が滲み出る。けれどそれさえも京には心地良かった。  しばらく歩いた京は、ふと近くの雑木林を見つめた。 (変だな…。学校の近くにこんな森みたいな雑木林あった?)  ありふれた日常から少しだけ異空間に繋がっている気がして、京は自然とその雑木林へと足を運んでいた。  始めは植物たちも歓迎するかのように、涼しげな葉ずれの音を響かせ、キラキラと木漏れ日を運んでくれていた。京は気分が良くなりどんどん奥へと進んだ。  すると雑木林は次第に様子を変えていく。雑草の背丈は京の膝辺りまで伸び、緑も濃くなり暗い。しかし京はまったくその変化に気付いていなかった。 「…っん」  しばらく行くと人の声らしきものが聞こえた。それも女の喘ぎ声のようだ。京はビクリと金縛りにあったかのように動けなくなった。 「…っはぁん、あぁんっ!!」 「気持ちいいの?この淫乱」  女の嬌声が一段と高くなった時、低い男の冷めた声が聞こえた。京は早くこの場を立ち去りたかった。しかし気持ちとは裏腹に、身体は声のする方へと向かっていた。  その間も女の嬌声はどんどん高くなり、息遣いも荒くなっていった。女にシンクロするように京の心臓も早鐘のようにドクドクしている。  ガサ…  京の目に映ったものは。
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