1人が本棚に入れています
本棚に追加
「いやぁぁぁぁっ!!」
『レクイエム』の中に悲鳴が響いた。京の着ているワンピースは、京が殺されるくだりで益々赤く、益々美しく咲き乱れた。
慧は横になり苦しむ京を無表情で見下ろす。
「殺さないでっ!!」
見る気はなかった。
誰にも言わないから。
だから、助けて。殺さないで……。
京がゆっくりと落ち着きを取り戻す。
耳を澄ますと微かに、オルゴールの不思議な音色が聞こえて来た。
慧はゆっくりと京を抱き抱えると、十字架の真下に彼女を眠らせた。
「苦しむことはないよ…」
慧はゆっくりと彼女に語りかけた。
「ほら。聞こえるでしょ?君への鎮魂歌が。大丈夫。音を辿ってごらん?」
慧がぽんっと額を叩くと、彼女の閉じられた瞳から一筋の涙が流れた。そしてその身体は徐々に空気へと解けていく。
…彼女はゆっくりと、消えて逝った。
最初のコメントを投稿しよう!