◆10◆ 忍び寄る別れの魔の手

7/15
前へ
/30ページ
次へ
   「おやおや、本当に久しぶりだな。」  久方ぶりの登場に笑顔がこぼれる。 「今日は、大切な話しがあって来ました。」 「そうか。ほら、こっちに座れ。」  息子のような青年をカウンターの席に誘う。 「少しの間だけ、灯りを落としてくれますか?」 「あ、あぁ・・・いいよ。」  いつになく真剣な態度に看板の灯りを消した。 「ほら、これで客も来ないから2人きりだぞ。改まってなんの話しなんだ?」 「まず・・・長らく休んでいたのに今更なのですが、バイトを辞めさせて下さい。経済学部の特進クラスに移るので暇がなくなります。」 「判った。バイトのことは、気にしなくていい。まぁ、お前目当てのお嬢さん方が居なくなるのは・・・痛手だな。」  グラスを拭きながら重たい空気を消すように軽く返した。 「もうひとつは・・・月依さんの、ことです。」   
/30ページ

最初のコメントを投稿しよう!

98人が本棚に入れています
本棚に追加