◇9◇ 絵画コンクール

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   「仕方ないわね。」  ボックスには、先客が居る。仕方なく公衆電話の方に入り番号を押した。 「月依、さん?」 「そう。よく判ったわね。」  すぐに名前を呼ばれて嬉しくなった。 「心配してたんだよ。」 「ごめんね。急な出張に行かされちゃって。充電も切れちゃったのよ。」 「そう。気を付けてね。」 「ええ。明後日には、帰るわ。」  電話を切った。  明るい声に少しだけ励まされたが罪悪感は、残る。病院にいい思い出などない。  》 》  嘘が上手になっていいことは、余計なことを詮索されないこと。私は、誰にも本心を言う気などない。  でもこの想いを書き記しておきたい。  《 《 「ただいまー」  2日後の夕方に家に帰り着くと彼の姿がなかった。 「あら・・・」  出迎えてくれることを少なからず期待してしまっていた。   
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