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「もうあの男と前のような関係には戻れない。越えてはならない一線だというのは、分かっていただろう」
ネオンの暮らす集落では長に当たるラスタは、感情を籠めるのが苦手だ。
そんな相手に、優しく語りかけられて、ネオンは弱々しく「ええ」と答えることしかできなかった。
それなのに気持ちの整理はつかない。ここを離れたくないと本能が告げているのだ。
「分かっていても止められない気持ちは、どうしたら止められるの?」
絞り出した声は掠れて、辛うじて聞き取れる程度。
その事実だけで、ラスタはネオンがどれだけ傷ついているのか、理解することができた。それでも、例外を作るわけにはいかない。
「ネオン、君だって分かっているとは思うが、主に恋をした時点で、彼との契約期間は終了している。我々使い魔が、主に対して特別な感情を抱いてはいけない。立場が逆ならいいというわけではないが……」
それに、彼はもう君に会いたくないと言っている、とは伝えることができなかった。
心を閉ざしてしまうことなど、結果を見なくても理解していたから。
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