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夜叉(やしゃ)。それは毘沙門天の眷属として羅刹と共に北方を守護する鬼神。その獰猛さに相反する美しい姿から、夜叉はしばしば女性に例えられた。
時に昭和十三年(1938年)。激動の二十世紀。
当時の新興軍事国家大日本帝国は欧米に比べ軍事力の近代化、特に陸軍力において大きく水をあけられていたが、たったひとつ、列強と互角以上に対抗し得る軍備を持っていた。
それは『兵士の質と数』である。
最多時の総兵力六百万人。この数字は、実に、当時の総人口のおよそ一割。
つまり、日本人のほぼ十人にひとりが『兵士』だったのである。
大日本帝国が誇った最強の兵器。
それは零戦でも戦艦大和でもない。
兵士。つまり、訓練された『人間』だった。
これは、菩薩の如き容姿に夜叉の如き強さを身につけた闘姫たち『夜叉姫』の物語である。
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