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「やい、こら! ここから出せってんだ! それがダメなら軍刀でもナイフでもいいから、あたしに貸せよ! のどぶえかっ斬って自害してやるーー!」
窓のない薄暗い地下室に少女の叫びが響いた。
照明といえば十燭光の電球ひとつしかなく、三方をベトン(コンクリート)の壁に、正面を太い鉄格子に囲まれたそこは、凶悪な犯罪者を拘置するために用意された部屋だった。
「こんの野郎! 聞いてんだろっ。解ってんだぞ! こんな恥ずかしい格好させて、お腹冷やしたらどうしてくれるんだよーー! こらあーー! 返事しやがれ!」
恥ずかしい格好――。
その言葉が適当かどうかは解らないが、怒鳴り声の主『真清田博子(ましだひろこ)』は一糸まとわぬ全裸で木製の十字架に縄で手足を縛り付けられ、若く美しい肢体を身動き出来ぬようにされていた。
その姿はまるで処刑の時を待つ基督のようであったが、澄んだ瞳は生気と憎悪と怒りに燃え、自害すると叫んではいても、少しの諦めも弱気も感じさせない。
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