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今日は、月に何度か作っている仕事をしない、完全なる休日で普段家の中でずっといる私だったけれど、珍しく外に出た。予定があるのだ。
日差しを避けるように木々の下を歩きながら、私は小さな丘の上にあるこの島唯一の病院へと向かって歩いていた。
特に具合が悪いわけじゃないけれど……幼い頃に発症した持病の定期検診にのために数か月に一度、病院を訪れていた。
「こんにちはー」
「やあ、千鶴ちゃん。こんにちは」
白髪頭の先生が、いつもと変わらない優しい笑顔で私を迎え入れてくれる。
「今日はどうだい?」
「私はいつもとかわらないですよ」
「それはよかった」
聴診器で胸の音を聞くこともしない。ただ先生と話してそれで終わり。
持病の定期検診、なんていうと重病のように聞こえるけれど、別に身体が病魔に侵されているわけでもない。
ただ――。
「違和感は、ないかね?」
「はい、特にないです」
この島に移住してからの数年、持病が原因で困ったことはなかった。けれど、何かあった時のために私以外の人に私のことを知ってもらっておく必要がある。
だから、病院通いは欠かせなかった。
「でもね、先生」
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