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印刷した原稿を一ヵ所に拾い集めると、背表紙に“片桐千鶴”と、自分の名前が書かれた本が並ぶ本棚へと無造作に置いた。
「一、二、三、四……五冊かー」
こうやって本を書くことを仕事にしてからもう数年が経った。初めこそどうしたらいいか分からないまま書き連ねていた文章も、今では少しマシになったんじゃないかと思う。
――あの時、信じられる人が誰もいなくなった私に、高橋さんが声をかけてくれたから、今こうやって一人で生きていくことができている。
「もう五年も経つんだなぁ」
両親が亡くなってから、一人暮らしを始めてからいつの間にか五年が経っていた。幸いにも両親は多額の遺産を残してくれていたから当面の生活には困ることはなかった。でも、そんな生活を何年も続けることなんてできない。そんな時に声をかけてくれたのが父の古くからの知り合いだった高橋さんだった。
おかげでベストセラーとまではいかないけれど、遺産の残りと小説を書いて得たお金でこうして生計を立てることができている。
「でも、ここを買った時は驚かれたなー」
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