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「あの……」
突然の言葉に戸惑う私に、その人はふっと柔らかく笑った。
「すみません、急に言われてビックリですよね。僕は大沼といいます。大沼飛鳥です。……僕のこと、知ってますか?」
「いえ……。あの、でも……新しい担当さん、じゃないんですか……?」
「――そうです」
一瞬、笑顔が翳った気がした。けれど、彼――大沼さんはすぐにニッコリと微笑むと名刺を私に手渡した。。
「あ、高橋さんから連絡いってましたか?」
「はい、今日挨拶に来るって。……わざわざ遠いところすみません」
念のため、名刺に書かれた名前を確認する。……確かに、この人で間違いないようだ。
「突然すみません。是非お会いして挨拶をと思って。僕、片桐先生の作品が大好きなんです」
ああ、それで――。先程の唐突な告白は、作品のことだったんだ……。あんなふうに言われることなんてなかったから、一瞬焦ってしまった。
「そうなんですね、ありがとうございます」
「今回こうやって担当になれて嬉しいです。僕にできることがあれば何でも言ってくださいね!」
ニッコリと笑うと大沼さんは上がってもいいですか? と私に尋ねた。
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