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慌ててどうぞとスリッパを差して、リビングへと案内した。
「でも、すみません。せっかく来てくれたんですけどまだ仕上がってなくて……」
「あ、大丈夫です。顔合わせと進捗確認を兼ねてきたのでそこは気にしないでください」
「はぁ……」
それならばテレビ電話でもよかったのではないだろうか、そう言いかけたけれど……優しげに微笑む大沼さんを見ると何故か口に出すことは出来なかった。
「あ、じゃあとりあえずこれ。昨日、印刷した分なんですけど……」
先程かき集めた原稿を大沼さんに手渡した。まだ文章は荒いけれど、確認だけなら大丈夫だろう……そう思ったのだけれど、その原稿を手に取った瞬間、大沼さんが酷く動揺したのが分かった。
「大沼、さん……?」
「あ、えっと……す、すみません。憧れの先生の原稿だって思うとドキドキしちゃって」
口ではそう言うけれど、どう見ても取り繕うように笑っている。いったいどうしたというんだろうか……。
手渡した原稿を覗き込む、と――そこにはいくつかの書き込みがあった。こんなの、私書いたっけ……。
必死に思い出そうとするけれど覚えがない。――けれどその文字には、何故か見覚えがあった。どこで……誰がどうして……。
「あの……それ……」
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