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あの日から、月に何度か大沼さんは島を訪れるようになった。
大沼さんとの仕事は、思った以上にやりやすかった。前の担当さんから聞いて私のやり方を知ってくれているのか、ペースをつかむのが上手いのか――同じ空間に人がいる中で仕事をするのが苦手な私にとって、大沼さんはそこにいることが苦痛にならない人だった。
「こんにちはー、進捗どうですかー?」
今日も定期便のようにそう言って黒沼さんは現れた。
「ダメですねー、進まないです」
「そういうときもありますよねー」
手に持った袋を見せると、大沼さんは笑う。
「シャーベット持ってきたんで、もうひと踏ん張り頑張ってください」
「わーい、ありがとうございますー」
「冷凍庫借りますね」
台所へ向かいながら大沼さんは話を続ける。
「向こうを出る直前に買ったんですけど、ドライアイスが二時間しかもたないって言われたんでドキドキしながら来ましたよー。これで溶けてたらただのジュースになるーって」
「あはは、それは確かにドキドキですね。有名なところのなんですか?」
「最近できたところで、若い子に人気らしいですよー」
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