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私はいつになったら泣けるのだろう。
泣いてしまえば楽になるのに。
全ての感情を吐き出してしまえば、後は清々しい気分になれるのだろうか。
私はあの日についた嘘と一緒に、感情を置き去りにしてきたみたい。
それを探しに来た駅のホーム。
湿っぽい空気が構内を満たしていた。
そういえば梅雨入りをしたと、朝のニュースで言っていたのを思い出す。
たいして気にならない話題だったけれど、私の代わりに泣いてくれるのなら好きになれそうだった。
「元気でね」
「手紙も書くし、メールもする」
「ちゃんと返事書く。浮気しちゃ駄目だからね」
若い男女だ。ホームで、電車に乗り込む彼氏を涙目で見つめている。
お互いに本当に好きなんだろう。言葉の一つ一つに優しさを感じる。
今日は日曜日。
きっと遠距離恋愛をしている二人が、別れを惜しんでいるのだろう。
私も、三年前は彼らと同じような会話を交わして別れた。
でも私はあんなふうに、優しくはなれなかった。
彼は都内の大学へ行くために、このホームから旅立った。その日は雲一つない快晴で、私の気持ちを逆なでするようだった。
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