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「えっと……」
「莉子です。笑わせてくれて、ありがとうございます」
「あ。僕は……」
あの日の別れから私は動けなかった。
だってお互いの嘘で傷つけ合っただけだったから。
今でも好きだと言えないまま感情を消したから。
手紙が全て嘘だったこと、瑛人は気づかないふりをした。私も本当のことは言わないでいた。
馬鹿だよね、本当に。
本当の気持ちを言っていたら、何かが変わっていたかもしれないのに。
でも本心をさらけ出していたら、この出会いはなかったかもしれない。
嘘なんて大嫌い。
でも、心がある優しい嘘は好き。心に響く。だからこそ言えた言葉がある。
「あなたのこと、好きです」
さようなら、嘘つきな私。
さようなら、嘘つきな元彼。
ありがとう、気にかけてくれたあなた。
ありがとう、笑わせてくれたあなた。
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