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「気をつけて」
私はそう言って荷物を彼に渡す。中に私からの手紙を忍ばせて。
「大学、留菜と一緒なんだってね。最近、聞いたよ」
「あ……言ってなかった……かな」
頭を掻きながら瑛人は誤魔化す。全部知ってるくせに、そうやってとぼけるなんて酷い。
そのピアス、瑛人好みじゃない。
その香水って誰のもの?
寒くもないのにマフラーなんて巻いて……どうして?
「昨日、留菜とここでお別れしたの」
「そうだったんだ。莉子と親友だもんな」
「でもおかしいのよ。直前まで大学どこへ行くか教えてくれなかったの」
嫌味。私はあなたを試してる。
笑いながら、あなたの感情を探る。
あなたが謝ってくれたらなんて期待してる。
「莉子と別れるのが辛かったんじゃねえの?」
「そうかしら」
嘘つき。私もあなたも、嘘で固めたような会話をしている。
早く別れを切り出せばいいのに、瑛人は遠距離恋愛をして私をキープしながら、留菜と付き合う気なんだ。
最低。
最低な馬鹿なのに、どうして好きになってしまったんだろう。
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