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 瑛人。あなたのこと忘れられない。  あなたのこと、まだどこかで想っている。だから叶わない願いに胸が空洞になっている。  それじゃ駄目。  だから、進むことを決めた。  新しく始めたい。もう私、新しい恋が出来る気がするから。 「私、好きですよ。あなたのこと」 「え?」 「とても気持ちがいい人だから」 「嘘、ですよね?」  これは嘘じゃない。本当の気持ち。 「あなたを恋愛対象として、見てもいいですか?」 「え。今日はエイプリルフール……じゃないですよね?」 「違います」  驚いた様子の男性が言葉を探して右往左往。可愛いクマみたいで、思わず笑ってしまう。 「あなたはいつも電車から見ていた。目が合ったの、わかってましたよね?」 「気づいていたんですか?」 「私、あなたの優しい目が好きでした。いえ。救われました」  動きを止めて、今度はキョトンとした表情をしている。素直に反応してくれる彼はやっぱり可愛らしい。
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