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ねぇ、父さん
タイトル:ねえ、父さん(短編小説)
書いた人:甘らかん(かんらかんat犬好き)
打ちっ放しの壁に囲まれた少しひんやりする空間。パイプ椅子に腰掛ける。アクリル板越しに向こう側は見えるものの。
「2時間ドラマと変わらないな」
一歩下がったところでこの光景を眺めている僕がいる。椅子に座るのは抜け殻。
向こう側の部屋と会話がしやすいように顔ぐらいの大きさに小さな穴がいくつか空いている。
「2時間ドラマと変わらないな」
大切でもないことを2度言ってしまったが、言葉を出したのは僕じゃない、顔色の悪い抜け殻だ。
生きていることを確認するために首をまわしていたら向こう側の扉が開いた。
「イエーイ! フーッ!」
派手な登場だ。一回転して右手を天井に突き上げた。左手は腰に添えている。
拘置所でなかったら後ろについている男に脳天を叩かれているところ。刑務官にこんな身内で申し訳ありませんと謝った。刑務官は軽く会釈をして記録を取るために奥の席に座る。
「なんであやまんだよ??」
えびぞる勢いで爆笑。いつまでも遠くから眺めていたい。
「なんだよ、お前だけかよ。ミユキはどうした」
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