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「先輩、よかった、目を覚まされたんですね」
道冬の声なのだが、普段よりトーンが高い。まるで本当の女の子のようだ。
道冬までまともじゃない、と、夏樹は軽い絶望を覚えて絶句した。
その夏樹に、歩み寄ってきた道冬は小首をかしげる。ハーフアップにされ、髪飾りで飾られた髪がさらりと揺れる。
「どうかしました?」
「おまえがどうしたんだよ」
問いに問いで返すと、どうって? とまた返される。夏樹は道冬を見ていった。
「そのふりっふりな格好だよ」
答えた途端、
「おげんこ!」
頭に衝撃が降ってきた。いうまでもなく怜の拳だ。
「いてぇっ。おれがなにしたっていうんですか」
怜に聞くと、彼は「女の子になんてこというの」とわめいた。わけがわからない。
「女の子って、道冬は男子じゃ……」
「ひどいっ」
声を上げたのは道冬本人だった。
なにがひどいって? と返すと、彼は途端に目を潤ませる。
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