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「秋時が鬼狩りなわけないです。だってほら」
そういって、道冬はスマホを差し出してきた。
「秋時って、美緒さんの飼ってる柴犬の名前じゃないですか」
スマホの画面の中には、一匹の柴犬が表示されていた。
「なんっじゃそりゃあぁっ!」
絶叫モノだった。莉櫻はうざいし怜はオネエだし道冬は女だが、秋時にいたってはあんまりだ。
(もはや人間ですらない)
秋時という名らしい柴犬は、きらきらした子供のような目をしていた。写真の中では芝生の上で元気に口を開け、健康的な歯を見せている。まるで笑っているようだ。
道冬が指をスライドさせて、次の写真を見せてくれた。
次の写真でその犬は、美緒に頭を撫でてもらっていた。この上なく嬉しそうな顔をして、写真に残像が残るほど尻尾を振っている。
それを見て、
(あ、秋時だ……)
絶望的な気持ちで納得してしまった。美緒が好きすぎて、とうとう犬にまでなったらしい。
確かに年上の女性陣からは子犬呼ばわりされていたが、まさか本当に犬になるなんて、と、夏樹は沈黙した。
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