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「いてえ……」
脳天も痛ければ顔面も痛い。
「今度はなんすか」
怜に聞くと、彼は頭を抱えていた。
「夏樹くんこそどうしたのよ。杉野美緒さんといえばこの関東第七支部きっての無類の男好きじゃないの! きみの貞操を守るのに私と莉櫻がどれだけ苦労したことか! ときには身代りになって喰われたり!」
「そんな美緒さんは嫌だ!」
衝撃的すぎて思わず出た言葉はそれだ。
美緒といえば、過去に父親から虐待を受けていたせいで男嫌いになったという女性だ。強がっているけれど本当は男が怖くてたまらず、ともすれば年上なのに守ってあげたくなるような、可憐な人だった。
それが男好きだなんて信じられない。
途方に暮れる夏樹に、怜がまくし立てるようにいった。
「杉野さんといえばおはようの代わりに『かっこいいね』。こんにちはの代わりに『夜あいてる?』 お疲れ様の代わりに『やらないか』があいさつ化してる魔性の女よ」
「どんなあいさつなのっ!」
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