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にわかには信じがたい。
(もうやだ、みんなやだ)
泣きたいような気持ちになって顔を覆った。
「この分じゃ愛利もまともじゃないんだろうな」
なにしろ現状がこれである。まるで別世界にでも迷い込んだようだ。
絶望的な気持ちで漏らしたつぶやきに、場に動揺の空気が流れた。
不思議に思って顔を上げると、莉櫻、怜、道冬が顔を見合わせている。
「なんだよ」
問いかけると、莉櫻が答えた。
「愛利って誰わんにゃんコンポコ?」
「……」
もはや彼女は存在すらしていないらしい。
絶望感に打ちひしがれて、夏樹はとうとうベッドを降りた。そして靴も履かずに駆け出す。
「おい、どこにいくんだわんにゃんコンポコ!」
莉櫻の声が追いかけてくるが、夏樹は無視して逃げ出した。
「もう嫌だ! こんな支部大っ嫌いだ!」
(ここは違う。おれの知ってる支部じゃない。おれの知ってるみんなじゃない。ここには愛利がいない)
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