夏の想ひ出 根津 康平 

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夏の想ひ出 根津 康平 

1 「んじゃあ 支度して善照寺、今日泊りに行くからなぁ」と 芸術部会合のあと、二人揃って夏の暑い日が照りつける道を下校中。 急に話がまとまったようです。 ちゅーさんこと 根津 康平 坊さんこと 徳田 重胤に言い残すと まさに ネズミの如く 突っ走って 家へと帰って行きました。 ちゅーさんは 幼い頃から 坊さんや 善照寺の住職に可愛がられて よく 泊りに行ったりしてたのだが、 中学二年になってからは 久しぶりとあって ウキウキ気分で支度してます。 「そうだなあ.あの手紙のこと 相談するか」と 通学鞄から 出した なんだか 彼が持つには不釣り合いな 可愛らしい手紙を眺めては ふー!っと ため息 そして 保険の外交員である 母に 今日は 寺に泊まるとメモを残して   ネズミのように 再び ちょこまか 走り出しました。 彼は幼い頃 父を亡くして 母に愛情いっぱい 育てられ。 明るく元気な子に育っていますね。 根津家からは 鎮守の森のある永倉城跡公園近くの善照寺へは 歩いて十分くらい 夕殿川沿いの道を走っていると川の畔に 白鷺の大きな姿が 見えたりする まだまだ 自然の残る道を走って 到着しました。 善照寺 五重の塔 そして 鐘楼を見上げては 「無惨やな兜の下のきりぎりす」と俳句を言っては こっちは「三つ首塔か」などと横溝正史の世界に浸っていると 坊さんこと 徳田 重胤君  こちらに気がつき 自分の部屋の窓から 手招きしてます。 笑顔で 迎えてくれた 和尚さんに挨拶をきちんとしては 重胤坊さんの部屋へ 勝手知ったる他人の家とばかり  入って行っては 早速 あの手紙を出しては「坊さん 俺さ。今朝 下級生の女子から こんなん貰ってさ。どうしたもんじゃろのぉ?」 意外眺めてものを見せられた 重胤坊さん 「ちゅーさん もてるんだなあ わしには無縁のらぶれたーじゃあのぉ」と可愛らしい文字で 「ぜひ 友達になってください」っつう意味のことが書かれてると言われたのだが 「んじゃがなあ その子、下級生でさ しかも俺より身長が高いんだよなあ うーむ?」 彼の悩みは 小学生までは 同級生たちとは 肩を並べて 普通に会話してたのが 中学に入って 皆が 背が伸び出して なんだか 今では 自分だけ 見下ろされているように思われて。。。。
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