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やってしまった! と青くなったけれど、まだ夕食が残っている。まだ、間に合う。
慌ただしく着がえると、私はリビングに向かった。のんびりドーナツを食べながらお茶をする二人に頭を下げる。
「寝坊してごめん! 今日の夕食は、私が作るから」
「いいよ、別に期待してないし」
娘のクールな声に、だよねぇ、とがっくりと落ち込んだ時、カーネーションの巨大な花束がぶつかってきた。
「お母さん、いつもありがと」
花束の向こうで、娘が照れ笑いをしている。
「待って! ありがとう、は私に言わせてよ! 私は二人が寝てから帰ってきて、二人が出かけるときにもまだ寝こけてて……ダメな母でごめん……」
自分で言って情けなくなってきた。
ボロボロと涙をこぼす私に、二人が口々に言う。
「いいんだよ、母とか父とか子どもとか、役割を決めつけなくても。家族なんだからさ」
「そうだよ、それに私、お母さんの料理は好きだけど、寝顔はもっと好きだしさ」
「結婚したのだって、キミの寝顔を毎日見たいからなんだよ。知ってた?」
私は溢れる涙を手の甲で拭った。
自分の寝顔がそんなにステキだなんて、知らなかった……!
どんなステキな寝顔なのか。
ワクワクしながら画像を見せてもらって、私は絶句した。
とんでもないアホ面!
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