1 また、会える?

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 不覚。一生の不覚だ。ヤロウに抱きとめられるなんて。しかもまたいい匂いがするし。調子狂う。 「それ、シャンプー?」 「え?」 「香水かなんか使ってる?」  強引な話題転換は失敗の兆し。しかも敬語はどうしたオレ。さっきの一瞬でいろいろぶっ飛んでしまった。 「香水は使ってないよ」  おお、神様。合わせてくれた。しかしいきなりフランクすぎる。ヤバイ、かなり気まずい。 「そう。じゃ、シャンプーなんだ」 「……くさい?」  自分をくんくんしながら訊いてくるので、思わず吹いた。 「んなわけないじゃん。逆。すっげえいい匂いすんの」  ……ダメだ。相手が困ってる。明らかに困ってる。相手は男子だ。さすがに微妙だ。 「あ、ありがとう……」  神対応バンザイ。また合わせてくれた。気まずさはマックスだ。  そうこうしているうちに、先週彼が最初におりた駅の名前がアナウンスされた。 「あ、次?」 「うん」  いきなりフランク化してごめんなさい。心のなかで懺悔する。まあどちらにしろ、年齢的に近そうではある。だからこのほうがいいに違いない、うん、絶対そうだ。 「あ。連絡先。教えて」  少し声を張って、彼が言った。 「ごはんいかない? お詫びに、おごるから」  貧困大学生に「おごる」は魔法の言葉だ。 「マジで」
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