グリム館

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気がつけばこの館の目の前に呆然と立ち尽くしていた。 私はつい先程まで楽しく食事をしていたのにだ。 館の周りは木々に囲まれて鳥達が空を羽ばたき不気味な鳴き声が響いていて、風の音が木々をかすめる。 空に太陽はなくドス黒い雲があるばかりでより一層この状況を恐怖へと感じさせるには充分だった。 館の外観はお世辞にも綺麗とは言えない。見たところレンガ造りの建物だろうか。外壁には苔が生え、二階の窓は割れていて、端々にこの館が何年もの月日を太陽の光を浴びる事なく人の目につく事もなくただひたすらと時の流れに身を任せてきたのが伺える。 「可哀想な館…… 」
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