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何よりヴィンセントから悪い物を感じない。今を幸せに思っている。そういう様子だ。
「聞かなかった事にします、ヴィンセント様」
「有り難う、ゼロス。貴方はとても賢いようだ」
「…知らなくてもいい事まで、一般人に教えないで下さると嬉しいのですが」
「クラウルの恋人なら、どこかでバレる。その前に教えておかないと、後でまた揉めるだろ? こういう事は最初が肝心だと思っているのだよ、私は」
そう言われるともうどうしようもない。ゼロスも諦めるしかなかった。
「それにしても、クラウルが恋だって。もう、最初に聞いた時には驚いて嘘だと思ったもの」
楽しげに声を弾ませるカールが、興味津々とゼロスを見る。この目はとても苦手だ。仲間内での会話でも、こうまで期待された目はなかった。
「カール、頼むからこれ以上突かないでくれ。俺だけの時に話すから」
「せっかく目の前にお相手がいるのに。ねぇ、この無愛想のどこが良かったの?」
「クラウル様は無愛想ではありません。名も知らない新人を励ましてくれました。部下にはとても心を砕く、優しい人です。俺はまだこの方の一面しか見ていませんが、その一面を愛しています」
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