私の可愛い苺ちゃん(ルイーズ)

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 狼狽えても逃げない。本当に嫌なら殴り飛ばしてでも、突き飛ばしてでも拒むだろうに。コナンはそんな事をしない。だから図々しくこうして側にいる。本当には嫌われていないと分かるのだ。 「大丈夫、これ以上の事は流石に君の許し無しにはしない。私は悪い狼にはなりたくないし、一度の衝動で君に嫌われては切なくて胸が潰れてしまう」 「これ以上! これ以上って……っ」  想像したのか、湯気が出そうな程に赤くなったコナンが突然立ち上がる。そして猛然とドアをでていった。  それがあまりに唐突で、止める間もなかった。  誰もいなくなってしまった部屋は途端に色を失い、空虚な場所になってしまう。寂しく思い見回して、そして置かれた苺に目を留める。  部屋に色を添えるそれにくすりと笑い、ルイーズはその一つを手にする。 「さて、どうしたらこの腕に身を委ねてくれるのだろうね。私の可愛い苺ちゃん」  手にした苺を口に入れ、ルイーズはなんとしてもディナーに誘おうと、あれこれ画策するのであった。
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