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秘密は無しでお願いします(ゼロス)
安息日前日、ゼロスは仕事終わりに宿舎を出た。それというのも、クラウルから頼み事をされたからだ。
向かったのはいつもの秘密基地ではなく、クラウルの別宅。ハリーの事件でクラウルの父の記録を読みあさったあの屋敷だった。
それというのも、あそこの記録整理を手伝って欲しいとの手紙をもらったからだった。
あの家はクラウルの父が生前住んでいた屋敷で、筆まめだった人の日記や、本来残ってはいけなかった軍部の極秘資料などが平然と転がっている。
信頼出来る一部の人間にしかみせる事ができないのに、整理整頓出来ない性格だったのか日付も順番もなく、分類わけすらされずに山積みになっていた。
あれを多忙なクラウル一人が整理するとなればどれだけ大変か。資料漁りをしたゼロスには言わなくたって分かった。
とりあえず向かった屋敷には灯りが灯っている。ドアベルを鳴らせば、直ぐに内側からドアが開いて思う通りの人が出迎えてくれる。
「すまないな、ゼロス」
「いえ、構いません」
私服に着替え髪も下ろしたクラウルが、申し訳なく眉尻を下げる。大した事はないと中に入りそのまま書斎へと向かおうとすると、何故かその手を止められた。
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