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「…後日改めてお話があります。俺は欺されるのが嫌いです」
「待ってくれゼロス!」
大慌てでクラウルがゼロスを抱き寄せて、どこにも行かせないと締め付ける。なんて酷い奴だろう。腹が立っているのに、この腕が全部を有耶無耶にしてしまう。
「ちゃんと説明をするから、頼む待ってくれ」
「…あの」
ふと耳に触れる忍び笑いがどうにもいたたまれない。注がれる視線の好奇な様子に恥ずかしくなる。見世物ではないのだ。
「分かりましたから、まず離して説明してください。どうして陛下と、側近殿がいるのですか」
諦めるしかないし、このままではこの場であらぬ事までされそうだ。なにせこの男は他人を押し流す事に関しては上手い。
この間も少し甘える練習にと思ったら、日中からベッドに引き込まれて散々に喘がされた。しかも文句を言えば「可愛かったので抱きたくなった。甘え上手だな」などと平然と言って笑ったのだから。
諦めて部屋に入ると、カールとヴィンセントが温かくゼロスを迎えてくれる。そこには遠く見た皇帝の威厳はなく、むしろとても親しげな温かさがあった。
「ごめんね、驚かせて。秘密にして驚かせたい、紹介しろってそいつに迫ったのは私なんだ。責めないでやってね」
「あの、陛下…ですよね?」
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