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「カールって呼んで欲しいかな、今だけ」
「……はぁ」
もうどうしたって脳みそがついていかない。ただ「流される」という事も分かっている。とりあえず、今はそれが適当に思えた。
「それにしても、仏頂面のクラウルに恋人ができたとは。世も末だ。一体いつからだい?」
軽い感じで近づいてきたヴィンセントだったが、ゼロスの後ろにクラウルがついた事で触れるのは止めた様子だった。ただ苦笑だけをする。
それがいたたまれず、逆にゼロスはクラウルを睨み付けた。
「お気遣いは結構です」
「…怒るな」
「怒っていません」
これにはクラウルも参ったのか、とても困った顔をする。別にそこまで怒っているわけではないし、もうこうなっては腹を括るしかないのだからいい。案外友好的なようでもあるし、カールにあのように言われては返す言葉がない。
ただ、ここでポーズだけでも怒っておかないと示しがつかない。半分意地のようにもなっていた。
カールに促されるように対面の席に座ったゼロスは、まずは自己紹介をした。だが、それも既に知っていた様子だった。カールも軽く名乗り、クラウルとは幼馴染みである事を明かしてくれた。
けれど驚いたのは、ヴィンセントの自己紹介だった。
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