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「ルシオ・フェルナンデス。知っていると思うけれど、嘘はつかずにおこうかな」
「なっ!」
その名を知らない騎士団員はいない。思わず立ち上がってしまったゼロスに、ヴィンセントは寂しげな笑みを浮かべる。
一方のゼロスは恐れや戸惑いで一杯だった。
「だって、死んだと。俺も首を見て…」
「ランバートが一枚噛んで、私にそっくりな偽物を作ってくれたんだよ。私はこうして、別人としてここに戻ってくる事ができた」
「それは……」
犯罪。そう出そうになる前に、クラウルの手が腕を引いた。
「俺が頼んだんだ。俺とカール、そしてルシオは幼馴染みだ。酷い運命で道が分かれてしまったんだ」
「私もそれを願った。戻ってきてくれるならどんなにいいかと。例え立場が分かれてしまったとしても、私はルシオの心を疑った事はなかった」
クラウルが、カールがそう言ってヴィンセントを庇う。それに、ヴィンセントはなんとも言いがたい顔をしている。
ゼロスは一度息を吐いて座った。今更何かを知っても、これが覆る事はない。ルシオの死は大々的に報じられた。何よりランバートが関わっているなら、ヒッテルスバッハが関わっていると言っていいのだろう。そこに皇帝まで絡んでいては何を言っても今更だ。
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