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楽しげに笑う二人にからかわれ、クラウルは今日アタフタしてばかりだ。それもまた面白くない。
それでも一応は礼儀を取る。ゼロスは立ち上がり、二人に丁寧にお辞儀をした。
「失礼な態度の数々、申し訳ありません」
「いいよ、欺したのはこちらだしね。それに、君がどれだけクラウルを愛しているかは、十分に伝わった。大事にね」
「お心遣い、感謝いたします」
トントンと肩を叩いて出ていったカールの後ろを、ヴィンセントがついていく。クラウルも一応は玄関まで彼らを送ったらしい。
その後直ぐに戻ってきたクラウルに、ゼロスは噛みつくようなキスをした。
「あんたは俺の気持ちをどこまで感じ取っているんだ。俺の事を信用していないのか」
「いや、そういうわけじゃ!」
「では、欺すような事をせずに堂々と言えば良かっただろ。友人に会わせたいと。俺が拒むと思ったのか」
責めるようになってしまうのはこの際仕方がない。何せ気持ちがそうなのだから。
項垂れたクラウルが、申し訳なさそうにしている。随分と弱いその表情は、他の誰も見た事のないものだろう。
「…なんて言えばいいか、正直迷った。素直に言って、拒まれるのも困る。だから…」
「欺して誘い出したのか」
「…すまない」
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