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序章1
ふと気が付くと、少し狭く感じるくらいの円筒のような物の中に立っていた。
考える間もなく、目の前に縦に真っ直ぐ切れ間が出来て、少し光が漏れたと思った瞬間、半円状に反り返った壁は音を立て両端へと消えていった。
なるほど、扉が開いたのか。
急に明るくなったせいか、少し眩しいが、何となく2、3歩進むと、すぐに左手のカウンター越しに座っている女性と目が合った。
あれ、この人、誰だ?
でもどっかで見たような・・・。
「それじゃ、ヒョウガ君、頑張ってね」
少し小太りで、例えるならヨーロッパ辺りの市場に居る、優しそうなおばさんのような風貌の女性が親しげにこちらを見ていた。
「あぁ・・・」
誰だっけ?思い出せない・・・。
その人物が記憶の片隅にあるような気がしているからなのか、不思議と大きな疑問は感じないので、優しそうなおばさんに軽く会釈をしてから、再びこの広くはない縦長の部屋を見渡した。
何だっけ、ここ。
だめだ、やっぱり思い出せない。
「それじゃあ、あちらへどうぞ」
おばさんの手の先に目を向けると、カウンターの角を左に曲がった向こうに、何やら何の変哲も無い木製の扉が見えた。
どうやら扉らしい扉はあれしか無いみたいだな。
カウンターの向かいには全身が映るほどの鏡があり、何となく自分の姿を見てみた。
そしていざその木製の扉の前に立つと、それは見れば見るほど何となく不自然に見えてくる。
そんな感覚に襲われながら、薄っぺらくて軽そうな木製の扉を開けた。
そこはどうやらパーティー会場のようで、テーブルクロスが掛けられた円いテーブルが、一目見ただけでは数えきれないほど配置されていると同時に、そこにはその幾つものテーブル達を囲む何十人もの人達が座っていた。
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