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長く話す気はなかったから、
思いきって一息に踏みこんだ。
長話は私が言いくるめられる恐れがある。
仮にも言論を担うマスメディア研究部なのだから、
話してわからない相手でもないはずだし。
「それは、どうして?」
「あの人、どうも風邪をこじらせたらしくて。
昨日も熱が高いとかで、本当、恐いですよねぇ、この時期の風邪は。というわけで、記事は別のものにするしかないかと」
「何言ってるの。
風邪なんて二、三日で治るでしょうが」
明るい笑顔がそのままだった。
そのためだろうか、声色が変化していることに、
私はちょっと遅れてから気がついた。
「田鍋さん? 昨日も感じたのだけど、あなたって私たちに、マスメディア研究部に、あまり良い印象持っていないんじゃない?」
気がついたことを呑みこむ前に、
立川部長が真顔に戻って私に尋ねた。
「そんな…ことは」
頑張って首を振ってみたけれど、校内マスコミの部長さんはこんなものに惑わされたりしないらしい。
浅いため息一つを吐いて、
立川さんの瞳が改めて私を射抜きにかかる。
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