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「それならそれでいいのよ? 私たちも、嫌なものは嫌だと正直に言ってもらえたほうが助かるし。──で? 横宮さんは、この件何て言ってるの」 「え?」 「その口ぶりだと、今までのは風邪をひいた彼を心配するあなたの意思でしょ。横宮さんは? 本人も、取材をやめてほしいと言っているの?」 端整な顔立ちがもう一度微笑んでいた。 ……人の笑顔で背筋が冷えたのは、初めてだ。 「…ええ、まぁ」 「嘘が下手ね」 「うっ、嘘じゃありません! 少なくとも私だけの意見じゃあ…」 「言い訳は結構。 本人の拒否なら参考にもしたけれど、それ以外にまで耳を傾けるほどうちは寛容じゃないわ。 今のは、協力できないというあなたの返事として、 受け取っておく」 「待ってくださいっ、私が言ってるのは、 協力がどうとかじゃないんです」 勝手にそれ以外にカウントされても困る。 こちらが抱えているのは、ちょっと厄介でせっぱ詰まった事情なのだ。
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