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椅子をすすめてくれた笑顔はどこいったのか、 あれよあれよと追い立てられて、私は押し開かれた硝子扉からぺいっと外に放り出された。 「待ってー、話を聞いてー」 すかさず扉にとりつくも、透明な硝子はどこまでも分厚い。当然のように反応はなかった。 ああ、これじゃあ昨夜のリプレイだ。 こんなのおかしい。 出入り自由なラウンジのはずなのに。 「お願いだから聞いてくださーい」 なんだか、とってもみじめな気分。それを振り切るように、もう半分くらいやけくそで叫ぶ。 そうしたら。 「よしなよ、栗。…君は頑張ったよ」 前方ではなく背後から、 そんな、同情に満ちた声がした。 * 「硝子張りだもん、外から見えるよー。 マスコミさんと同じ所に座るから、何事かと思って見守ってたんだけど。まさか直談判とはねー。 うんうん、頑張った頑張った」 ラウンジに一番近い階段を下りた先には、 飲み物とパンの自販機が置かれてある。 慰めとばかりに買ってもらったパックのジュースは、みかん100%だった。
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